風俗で働く女の決意

【風俗を決意した日】

「お願い・・・少し家にお金入れて?」
「子どももまだ小さいし・・・私はまだ働けないの!」
「ほんの少しでいいから・・・バイトでもいいからお金入れてくれなきゃ私たち全滅するんだよ!」

それが夫である和久に対する私の口癖だった。
返事は決まって「俺が子ども見ているから美由紀・・・お前が働けばいいんじゃね?」だった。
和久はお酒が大好き。
まだ9ヶ月の子どもの世話なんてできないくらいの酒乱・・・。

「この間、和久が飲んだとき何もしていない翼を殴って泣かせたじゃない!安心して任せられないわよ!」

私が大きな声を出すと、翼が泣き出した。
まだ9ヶ月の翼は、言葉は話せないけれど母親である私には翼の不安がよくわかる。

「翼、ごめんね!ママが大きな声出したからビックリしちゃったね・・・。翼は悪くないんだよ!」
「子ども泣かしてんのオマエじゃんw」

私は和久を睨んだ。

どうしてこんな生活になってしまったんだろう。
翼を妊娠し、順序は違うかもしれないけど、それがきっかけで和久と結婚した。
翼が男の子だとわかったとき、和久は大喜びで言ったのだ。
「息子に恥じないように・・・これからはしっかりと働かないとな!正社員で雇ってくれるところ探すから安心しろよ!」
この言葉を信じて、私は幸せ絶好調。
翼を産んだときは、これから始まる忙しいであろう日々を心から嬉しく思っていた。

しかし・・・今の現状はというと・・・。
夫は働かず、お酒に逃げ・・・私は子どもを誰に預けることもできずに生活費を補うものは私のほんの少しの独身時代の貯金と・・・実家からの金銭的な協力だった。

そして、私たちの生活はもう破綻寸前。
このままでは翼のミルク代もなくなるだろう・・・。
自分は食べなくてもいい。何も買わなくたっていい。何でも我慢できる。
でも・・・息子だけは快適な暮らしをさせてあげたいと思うのは母親としての愛情だった。
そして、私はその愛情ゆえ、決めたのだ。

風俗で働く・・・と。

聞くところによると、風俗は人気さえとれればかなり高額なお給料が貰えるらしい。
私が仕事をしている間、ベビーシッターにお願いしても生活はラクになるだろう。
和久は・・・アテになんてできない。
この男を信じてここまで結婚生活をおくってきたが、和久からマトモに生活費を貰ったことなんて一度もない。

私は・・・翼のために生きる。

風俗で働くのに必要なのは・・・私の覚悟だけ。
本当は、知らない男性にこの身をあずける・・・そう考えただけで恐怖感で頭がおかしくなりそう。

 

※こちらの小説は、大阪風俗求人いちごナビのコンクールに応募した作品です。いちごナビ様のご好意でこのサイトにも掲載させていただいています。是非、最後までお楽しみください。

 

【クズ】

PCを開き、風俗を検索。
出てくるのは、どれも高額な給与ばかりだった。そして・・・目を引いた風俗は・・・。
「デリバリーヘルス・・・デリヘル・・・」

私でもできるかもしれない。
そう思ったのは、数々の『優遇体制』からだった。
本番なし・自由出勤・服装自由・未経験者歓迎・完全日払い制・・・。
「今現在・お金がなくて・困っている私」にはピッタリの職業だった。

気になるのは息子の翼。
託児所にあずけるお金なんかない。夫なんてアテにできない。
私は実家に電話をかけた。

「もしもし、お母さん?もうそろそろ私仕事したいから、託児所見つかるまでの数日間翼をあずかってくれないかな?」

もう還暦近い母にお願いするのは気の引けることだったが、今の私にはこうすることしかでできない。

「いいけど・・・何だか翼がかわいそうねぇ・・・」
「大丈夫!ほんの数時間のパートだから・・・ね?お願い・・・」

母親は了承。
父は現役で働いていたが、私が「お父さんも・・・悪いけど翼をよろしくね」とお願いすると「任せろ!翼と遊ぶのは全然疲れないんだ俺は」と喜んでくれているようにも見えた。
・・・が、実際のところはわからない。
私が生活に困っていることは知っているし、父なりの気遣いだったのかもしれない。

夫である和久の説得は気持ちが悪いくらい上手くいった。

「何?お前仕事すんの?いいことじゃん(笑)」
「うん・・・あたしが働かないと生きていけないからね」
「で?翼は?」
「あんたには頼まないわよ。実家にお願いするから安心して・・・」
「そうか良かった。俺なんかに預けたら翼がどうなるかわかんねーよ(笑)」
「・・・・・・そうね」
「で?何のバイト?かなり給料いいんだろ?」

私は息を飲み込み、荒々しく怒鳴った。

「気付いているくせに・・・!女が稼ぐったら・・・職種は決まってるでしょう!?気付かないふり、知らないふりは一番卑怯なことよね!!」

和久は、一瞬真顔になったが、またいつものように調子良く私を抱きしめた。

「美由紀ちゃ~ん、そんなに怒らないでよ・・・俺何の仕事か見当もつかないけど・・・美由紀の判断なら応援するから・・・さ!」

クズ。
何でこんな男と結婚してしまったのだろう・・・。
思えばこの男とは翼が生まれてから・・・いや、翼を妊娠したとわかったときからセックスレスだ。
こんな男に無償で抱かれるなら・・・いっそお金貰って他人に抱かれたほうがよほど救われる。

でも・・・一番クズなのは私。
こんな男といつまでも離婚もできず、いつか目を覚ましてくれるだろうと淡い期待を抱いている私は・・・夢ばかり追っているクズなのだろう。